2017年11月1日(水)慶應義塾大学理工学部矢上キャンパスにおいて本年度第四回目の「貢献工学・減災学」を開催し、下村満子さんにご登壇いただきました。
下村さんは、ジャーナリストとして日本初の女性海外特派員を努められ、現在でもフリーで活動されるとともに、医療法人経営など20を超える役職を兼務しながら、「生きるとは何か」を学び合う「下村満子の生き方塾」を主宰されていらっしゃいます。
満州での死に直面した幼少期から単身ニューヨーク大学大学院への留学、ジャーナリストとして日本初の女性海外派遣特派員を歴任されるなど、その波乱に満ちた人生と挑戦的な行動力からくる実体験をベースに、利他の心、因果応報の法則、山川草本悉皆成仏など、「禅」の教えも交えながら、大変多くの示唆に富んだお話を聞かせていただきました。
また、これまでの様に欧米の価値基準を真似るだけではなく、人として正しいこと、人に尽くす喜び、損得ではない本質としての人の幸せの原点など、日本やアジアの良いところを21世紀型の価値基準として改めて見つめ直していく必要性について、学生の皆さんへ語りかけていただきました。
下村さんは、講演後の質疑のみならず、講義終了後に話を聞きにきた学生にも気さくに応じていただきました。明るく前向きな学生の様子がとても印象的でした。
学生の皆さんからいただいた主な感想や意見(抜粋)
・昨日のことや明日のことを後悔したり心配したりすると、自分の心がネガティブになり、本当にネガティブな結果になってしまうという経験はよくありました。本当にやりたいことがあれば、それに対して自分をポジティブにすることが大事だということ、物の考え方を正しくすることが能力よりも大事だということが良く分かりました。3年生になって進路のことで悩むことが良くありますが、今回の講演を聞いて「どうしたらよいか?」ではなく、「自分がどうしたいのか?」が大事なのだと分かりました。周りの目や外の世界に注目する前に、自分が何をしたいのか?自分とはどういう人間なのか?と自分と向き合うことが大事なのだと分かりました。
・自分が今後も覚えておこうと思ったのは、「自分を取り巻く環境は、自分が作り出した心の現れ」です。本当にその通りだと思うと同時に、自分に降りかかる全ての事象は、全て自分の責任なんだ、他の人のせいではないんだ、ということを考えさせられました。今の時代、スマートフォン等の機械の発展により、分からないことはインターネットで探してしまえる便利な時代。そんな中で明確な正解のない自分自身のことを考えるようなとき、考え込む方法をも忘れてしまった人たちが多いのかもしれないと感じました。だからこそ、生き方を忘れ心踊らない人生となってしまう人が多くなってしまうのだと考えました。また、自分が生まれたことはキセキなのだと自分を大切にする重要さも考えさせられたと感じました。今の人達に一番欠けているものは「哲学」なのかもしれません。問題提起を発する良い講演でした。
・今の自分の姿が20世紀型の考えになっていることを痛感することが多々ありました。具体的には、結果の数値ばかり注目しがちな点、目的が肩書になっている点、周囲の人にどう思われるかばかり気にしている点など、様々な改善点が見つかりました。最近、日本の大手の物作り企業による不正が目立っていて、原因は数値ばかり追い求め、本来の存在価値である利他の心を忘れていることにあると感じました。利他という人間の本質を見つめ直すことによって、人間力・魅力を上げたいと思います。私は将来、できれば起業したいと考えています。目的が「数値」「金」「肩書」にならないよう、利他の心を基本として何をしたいのか自問自答しながら考えていきたいと思いました。
・1つ目は、今の社会の現状についての危機感です。下村さんは経済生活が豊かになったが、その一方で人と人との関わり、コミュニケーションが希薄になってしまっていると仰っていましたが、私も同様の考えを持っていました。SNSなどで簡単に連絡が取れるようになってしまったが故、面と向かって話すという機会が減ってしまっているのではないかと思います。つまり「便利さ」と「心の豊かさ」が反比例の関係になってしまっているから、近年良くある「些細なことでキレて思いもしない事件を起こす」といったことが起きるのではないかと思いました。現代社会においても「心の豊かさ」を失わないためには、ありきたりですが、親友や仲間を学校やスポーツを通じて作ることが重要ではないかと思います。 2つ目は、21世紀は「見えない価値」を大切にするべきというお話です。自分の損か得かで行動している人が圧倒的に多いとありましたが、私は今の社会の構造が人々にそうさせているのではないかと思います。小学校、中学校と成長するにつれて受験という競争に勝たないといけない、学校に入っても「スクールカースト」という言葉があるように、上手く立ち回らないといけない、「正直者が馬鹿を見る」という社会になってしまっていると思います。賢く生きるということが子供のうちから染みこんでいるため、自分にとって損か得かという基準でしか行動できない人間が完成してしまうと思います。これを打破するためには、「学校のあり方」「社会のあり方」という根本も見直さないといけないのではないかと感じました。
・普段の授業は理工的で専門性のある内容であるので、時々難しくて理解できない部分も多少あったのですが、今日のお話は分かりやすく、かつモチベーションを高めてくれる内容だったので、気楽な気持ちで聞くことができ、すごく楽しみながら講義を受けることができました。一人で生きていける人はいない、皆助け合いながら生かされている、感謝の気持ちを持って毎日ひたむきに生きるべきである、と大変な人生を歩んできた下村先生だからこそ、恥ずかしがらずに素直な気持ちで言えるのだなあと思いました。
・同じ女性の先輩として尊敬したいと思いました。ジャーナリストから経営者の道に行くという職種が全く異なる環境に飛び込むには、大変な苦悩があったと思います。その経験談についても伺いたいと思いました。また、オシャレにも気を遣っていらして、芯のある女性はいくつになっても元気できれいなのだなと感じました。
以 上