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著書

『復活への道』 冨田 洋

はじめに――明らかになった空洞化現象の危険性


 日本中に大きなショックを与えた東日本大震災から1年が過ぎた2012年3月、震災を振り返る特集番組を見ながら、私は自然に対する畏怖の念をあらためて感じていました。また同時に、あの日から始まった活動を思い出していました。
  それは被災した福島原発や生活・産業基盤の復旧・復興といった、結果が形となって見えるものではありません。しかし震災が起こった直後から、私たちなりに被災地の復旧・復興のために何ができるのかを考え、取り組んできました。

 私はジオ・サーチ株式会社という会社の代表を務めています。その仕事は独自の調査システムと解析技術を使って地中や構造物内部の見えない危険個所を素早く正確に発見し、インフラの安全を守ることです。
  路面下、つまり道路や建物などの地下には、地下鉄や上下水道、ガス、電気といったさまざまなインフラが縦横無尽にはりめぐらされています。
  これらのインフラの周囲に、時として空洞が生じることがあります。その原因は、下水管の老栃化による土砂の流失や、地下鉄・共同構など大型構造物を敷設した際の地盤のゆるみなどです。
  問題は、こうしてできた空洞が道路の陥没を引き起こす危険性があることです。ひとたび道路が陥没すれば、命に関わる事故を引き起こす恐れがあり、移動・輸送が滞るため、地域の生活や経済に深刻な影響を与えます。ジオ・サーチはそのようなことが万が一にも起こらないよう、道路や港、橋などを中心に、地中を調査し、空洞や劣化個所を発見することで陥没などの事故防止とインフラの長寿命化をはかっています。

 そんな私たちが緊急に必要とされる場面があります。それが、自然災害時です。

 自然災害、なかでも東日本大震災のような大きな地震が発生すると大地は揺れて、地盤沈下や土砂が地上に噴出する液状化現象が起こります。これらによって引き起こされるのが地中の「空洞化」です。
  皆さんもTVで地上に噴き出す泥水の映像をご覧になったかと思います。あのとき、土砂を噴き出した地中は空洞になっているのです。場合によっては数百平方メートルという規模で広がり、放置すると陥没を引き起こします。

 東日本大震災では、この空洞化が多発しました。さらに、「液状化」も世界最大規模といわれるほど広範囲で起こりました。
  東日本大震災による被災地域は東北地方から関東地方まで南北500キロメートルにわたりました。一方、世界最大規模といわれるほど広範囲に「液状化」を生じ、東京湾岸で液状化した面積だけでも約42平方キロメートルに達しました。これは東京ドームの900倍の面積に匹敵します。
  震災が引き起こした液状化や圧密、それにともなう空洞の発生。
  あの日から、私たちの仕事は空洞化した個所を一刻も早く発見するための救急活動に変わりました。

 本書は、震災発生から現在までの、空洞を発見し、陥没を予防するための緊急出動をたどるドキュメントです。世界最大の空洞化現象によって、見えない地中がどのように被災したのか、そしてその結果から、来るべく自然災害にいかに備えるか。これまで一般には知られていない空洞化現象の実態とその危険性について知っていただきたいと思います。

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